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病院の管理栄養士の視点から、臨床栄養やコラーゲンペプチドへの期待について語った講演レポートです。

コラーゲンペプチドへの期待~美容から健康、そして臨床栄養まで~

新田ゼラチンコラーゲンセミナー
講演実施日:2018年11月19日(月) 会場:東京ベルサール九段下

紹介

宮城学院女子大学 生活科学部食品栄養学科
鎌田 由香 准教授

管理栄養士、臨床栄養師、糖尿病療養指導士として病院勤務を経験。
現在は宮城学院女子大学にて臨床栄養学をご担当。コラーゲンペプチド摂取が若年女性の筋肉量、骨密度に及ぼす影響についてなどを研究されている。

講演内容

1.病院の管理栄養士の仕事とは

最初に病院の管理栄養士の仕事について説明します。

ひとつは、患者さんの食事について、栄養のバランスを考えたり、病態別の食事療法を考える仕事。もうひとつは、栄養サポートチームなどの専門の管理栄養士として、個別の患者さんに対して、栄養状態を評価判定し、栄養状態を改善する仕事があります。

後者の仕事としては、栄養摂取量と、身体構成成分である体脂肪量や筋肉量などを把握することからはじまります。その経験の中で、見えてきたことをお話しします。

ご存じの通り、メタボリックシンドロームは動脈硬化につながることから、 内臓肥満を改善することが求められますが、最近注目されてきたサルコペニアは、筋肉が少ない状態により身体機能の低下をきたすことから、その予防が求められています。

病院に入院すると、一般的には安静にして回復につとめますが、安静にしていると代謝が衰え、筋肉量が減ってきます。ですので、筋肉を減らさないように、どのような栄養を補給するかを考えるのですが、動かない患者さんに栄養ばかり増やしても脂肪になるだけですので、食べる事だけでなく、リハビリや体操など身体を動かして筋肉を使うことも必要となります。

一度筋肉が落ちてしまうと、なかなか戻すの大変ですので、まずは落とさないようにする予防が大切です。

2.筋肉が少ないことの問題

筋肉が少ないと代謝が低くなり、同じ量を食べていても脂肪が増えます。 そして、支える筋肉が少なく体が重い状態になります。そうなると膝や腰などの関節が痛くなり、ますます動かなくなってしまいます。また、ちょっと歩くとつまずいて転んでしまう原因となります。

このようなサルコペニアを予防することが臨床栄養を考えるうえでの大事なポイントです。

3.身体構成成分から見えること

臨床の現場で栄養管理を行う際は、体重や身体構成成分を測ります。そのほか、骨密度、握力の測定、食事摂取状況の評価を行っています。身体構成成分を測る機器では、体重、筋肉量、体脂肪量が標準に対してどうかわかるようになっています。

体重が標準で筋肉量が標準より多く、体脂肪量は標準という場合は健康な状態ですが、体重は標準、筋肉量は標準より少なく、体脂肪量は標準より多い場合は、たんぱく質をしっかり摂って、運動により筋肉量を増やすことが必要になります。

4.BMIと体脂肪率の関係

現在、若年女性の「やせ」(BMIで18.5以下)が問題になっていますが、このような「隠れ肥満」も問題であることがわかってきました。BMI(体重/身長(m)2)を横軸におき、体脂肪率を縦軸においてみると、問題点がよくわかります。

BMIが良くても体脂肪率が高いと「標準体重肥満型(隠れ肥満)」です。

たとえば、身長150cm、体重50kg、体脂肪率23%の場合、50kg×23%=11.5kgが体脂肪量で、それを体重から差し引いた除脂肪体重は38.5kgになります。

一方、身長150cm、体重40kg、体脂肪量11.5kgの場合、体脂肪率は28.8%となり、除脂肪体重は28.5kgになります。(ここでは女性の体脂肪率の標準を18~28%としています)このように、体脂肪率だけをみると、脂肪が多いためにさらにダイエットをしようと考えたくなりますが、これは大きな間違いです。筋肉が少ないために体脂肪率が高くなっていることをしっかりと伝えていく必要があります。

また、体重が減った場合、脂肪量が減ったのか、除脂肪体重が減ったのかを見るのが大事です。ダイエットをする場合は、筋肉量が落ちて、この例のようになることがあるので注意が必要です。

体脂肪量と除脂肪体重

実は、女子大学生の隠れ肥満が多いことに驚いています。

5.女子大学生の現状

実際に、女子大学生222名を測定したところ、BMIが18.5以下の「やせ」にあたる人は10%、BMI標準は85%で、うち体脂肪率が高い人は3割を占めます。

筋肉量を見ると、体脂肪率が高い人、やせていて体脂肪率がちょうどよい人の筋肉量が非常に少ないです。またこれらの人は骨密度や握力も低いことがわかりました。

6.このような問題に管理栄養士としてどのように食事でアプローチするか

ほかの先生と協働して、「美活プロジェクト」と称して、食生活を改善し、身体を動かし改善する活動に取り組みました。しかし、食生活を変えることはなかなか難しく、なにか改善方法はないかと考えていたところ、コラーゲンペプチドを知り、これを使うことで筋骨密度を増やすことが出来ないかと思い、3年前くらいから試験を開始しました。

2017年の試験では、31名の学生をコラーゲンペプチド摂取群と摂取無し群に分け、コラーゲンペプチド摂取群は、新田ゼラチンのコラーゲンペプチド(新田ゼラチン製品コラゲネイド)1日5gを3ヶ月間摂取しました。結果は、1ヶ月後からコラーゲンペプチド摂取無し群と比べ、摂取群は筋肉量の増加が見られました。また、骨密度も摂取群で上昇が見られました。なんらかの効果は期待できると考え、引き続き、試験を継続する予定です。

7.傷病者へのコラーゲンペプチドの活用

臨床栄養の現場では、褥瘡予防や高齢者の栄養管理にコラーゲンペプチドが使用されています。褥瘡予防・管理ガイドラインでは、コラーゲンペプチドが、治療のための栄養素として掲載されています。褥瘡のある方は、肉や魚など“良質のたんぱく質”を摂取していただくことが大切ですが、思うように摂取できないことも少なくありません。そのような時に食事にプラスすることで、褥瘡の治癒を促進させることが期待されます。 褥瘡を治すには、いろんな要素が関わり、コラーゲンペプチドだけでという訳にはいきませんが、コラーゲンペプチドを使うと、お肌の状態が良くなっていくことを経験しています。

また、がんなどの疾患を治療している患者さんにおいては、食べられないことで栄養状態が悪くなることがあります。そのようなときに、ご本人が好まない食品を無理に食べさせるのは酷な話しです。ご本人が食べたいものを食べて栄養が補給できることが望ましく、見た目や味やにおいをあまり変えないコラーゲンペプチドは、そのような方の栄養を支えることが期待されます。

文責:コラーゲンナビ推進委員会 運営事務局 小田義高

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