コラーゲンペプチドの体感は人によって様々です。我々はこの謎を解き明かすため、研究を重ねてきました。その過程を皆様にご紹介したいと思います。
「カラダをめぐるコラーゲンの旅 Part1」豊かなコラーゲン産生とコラーゲン代謝
産学連携(※)のバイオベンチャー企業における活性型コラーゲンオリゴペプチド(ACOP)の研究でわかってきた新たな知見をいろんな視点でレポートします。
(※)東京農業大学、城西大学、(株)エアープランツ・バイオ
![カラダをめぐるコラーゲンの旅](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjky1qRUJNF_02NjwCDWbYxaomrKvNwtngCJJ3eMAl70KZRW2j8gM2UIhnRBmuXsA1eOPlGbWWEjhDFl4oFgnVQ4w2cdhQiqpYUtF96bYo3CuSTYEwt7SLpvDVxWf8bGZw5X_BPP-6Dqzo/s600/img_02.jpg)
読者の皆様はコラーゲンペプチドを摂取してどのような体感がありますでしょうか。実際、摂取した際の体感には個人差があり、効果に強弱が現れたり、効果が出る部位も異なったり、一方で、ほとんど体感が現れない方もいるようです。とても不思議な生理現象だと思います。我々はこの謎を解き明かすため、研究を重ねてきました。最近、一つの答えが見つかりました。その過程を皆様にご紹介したいと思います。題して「カラダをめぐるコラーゲンの旅 part1」です。
ランナーとコラーゲンペプチド
10月に箱根駅伝予選会が行われ駅伝シーズンに突入しました。年々高速化していくタイム。これは、新開発のシューズや心拍数のデータなど最先端の技術が活用され成し遂げられています。また、これらを駆使しながら、どの大学も徹底した健康管理や最新の栄養学に接し最善を尽くしているようです。選手の月間平均練習距離は750km以上におよぶことから、いかにケガを発症させずに練習し、ベストな状態で本戦に臨むかが課題のようです。
城西大学男子駅伝部が選手のトレーニングの継続性向上のためにコラーゲンペプチドを取り入れたことなどから、ケガ予防において近年コラーゲンペプチドは非常に有効性が高いことが判明しています。もちろん、アスリートだけではありません。高血圧予防などの健康維持や運動不足の解消を目的に、近年マラソンは一大ブームになっていますが、多くのランナーがコラーゲンペプチド(コラーゲン健康食品)の摂取により関節炎の予防と軽減の効果を感じているようです。
![城西大学男子駅伝部](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiuqJMwK6Z_4IwYGcsFvDuLJFJT2J90fIXmGBxvq8uWvgsxfdsET2XrSZz6hcStB7i1tGPGoKGpdlf8TMncpMVMD72RtSbJ5I0OILjljHL9UDMI3abB2ZMXUK4_OoZDghQA-8OrsVJoCS8/s600/img_01.jpg)
「体感の個人差」の謎をひもとく
一方、日常生活において腰痛やひざ痛を持つ60歳前後の女性にも、コラーゲンペプチド(コラーゲン健康食品)の摂取が推奨されていますが、こちらに関しては直ぐに体感がある方と、なかなか体感が現れない方がいます。 体感のある方は良いのですが、体感が現れない方には、2〜3ヶ月間摂取を続けていただいています。
なぜ、すぐに体感できる人とできない人がいるのか? 当初から、とても不思議な生理現象だと気になっておりました。生命科学研究に携わる立場として、この課題の解決に、非常に興味が湧きました。
そこでこの問題に取り組むため、何が問題かを整理してみます。
まず第1に「コラーゲン」というタンパク質が体の中でどのように作られ、どのように機能しているかを把握すること。第2に、コラーゲンペプチドがどのように働くかを調べること。そして第3に、何を調べれば個々の効果の違いを見いだせるか、です。このような取組みによって解決に挑むことにしました。
これらの情報を、コラーゲンナビの読者の皆様に共有したいと思います。 本稿では第1の課題である、「コラーゲン」というタンパク質が体の中でどのように作られ、どのように機能しているかについてご紹介してまいります。
コラーゲンは体内で合成される
多くの方がご存知のように、カラダの中のタンパク質は合成と分解を繰り返しています。新しいタンパク質を合成しては、古くなったタンパク質を分解する、これがタンパク質代謝です。例えばお肉やお魚を食べた際、それらのタンパク質は胃腸で消化・吸収され、アミノ酸として体内を巡ります。食事由来のタンパク質はそれ自身のタンパク質として機能することは、ほぼありません。すなわち、コラーゲンペプチドを摂取するとコラーゲンタンパクになる!という考えは間違いです。
コラーゲンは体内で合成されます。カラダの全タンパク質は体重の約20%におよびますが、コラーゲンは全タンパク質の約30%にもなります。つまり体重60kgの人のコラーゲンは約4kgとなります。我々は一緒くたにコラーゲンと呼んでいますが、実際にはコラーゲンには構造の異なる28種類ものタンパク質が存在します。皮膚、骨、腱、靭帯などにはI型コラーゲンが豊富であり、関節軟骨にはII型コラーゲンが多く含まれます。
![コラーゲンは体内で合成される](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEg8GXYKRtYwoaxjBhiE9zKZZEbNGpMEwH6ctsCO8u1MMl-8Xtgc6tVQKJXn77D0vL_KNKOdfmMz_lGQkXvl5KwaWLpGqAmKXSON5RaitdtaWGntaxEpEt6xAPqQXey7gDAQMTvv8hPN0sE/s600/img_03.jpg)
実はカラダで合成されるタンパク質は全てDNA配列情報が源になっています。コラーゲンの中でも最も大量に産生されるのがコラーゲンI型a1で、その遺伝子は17番染色体のゲノム上にDNA配列がコードされています。 コラーゲン合成が必要だという指令が細胞内に届くと、コラーゲンのDNA配列が読み取られ、コラーゲンRNAが作られます。作られたコラーゲンRNAは、そのRNA配列にコードされたアミノ酸が取りこまれ、コラーゲンタンパクが合成されます。
なんと、コラーゲンはカラダのほとんどの組織中の細胞で産生されていることが判明しています。最も多いのは皮膚、次に骨・軟骨です。産生されたコラーゲンタンパクは最終的に3つが重なり合って3重構造を形成します。さらにこれらが重合していきコラーゲン繊維を形成します。この構造こそが弾力を持ち、強くて頑丈な組織の形成に役立ちます。コラーゲン繊維の機能は細胞接着分子として、細胞と細胞をつなぎ合わせる足場として働いています。関節や軟骨、腱が柔らかいながらも強く頑丈にできているのは、コラーゲンタンパクを主として構成されているからです。
![コラーゲン繊維](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjiKGNOz8mk4iUAhQeuMg4AM-lyftxAR-A5UsvS4NGeZgtfLg8XP1NicMIRukS9wND2EvXnAs48ZwjyYgPiM2u2Toz184JfcrbyxYakG2aFrusUcJPSxpq97EDJV2xGVQ2gW2-JZaJ0F9M/s600/img_04.jpg)
コラーゲンタンパクの分解産物が機能する
さて、細胞の飢餓状態時や老朽化したタンパク質はやがて分解されます。カラダのタンパク質を分解し産生されるアミノ酸などの分解産物にも非常に重要な働きがあります。例えば、日常生活には色々な活動があります。激しい運動もあれば、睡眠など安静時もあります。このような活動には絶えずエネルギーを消費します。カロリーということばは食品表示として馴染み深いと思いますが、カロリーに換算されるエネルギー量を消費しています。
最もエネルギー産生効率が良いのが炭水化物です。脂肪は直ぐにエネルギーとして消費されず、炭水化物のように燃焼しにくいですが、エネルギー源としてたくさん貯蔵できるようになっています。細胞が飢餓状態に陥った際にもタンパク質分解によりエネルギー産生を行っています。エネルギー貯蔵効率は炭水化物や脂質に比べると極めて低いため、肥満体質改善のダイエット食品として活用されます。このように分解されたタンパク質の一部のアミノ酸はエネルギー源になりますが、コラーゲンの場合、エネルギー源以外に重要な働きの秘密が隠されています!
実はコラーゲンが3重構造を整える際、すでにコラーゲンタンパク分子中に複数あるプロリン(Pro)というアミノ酸に水分子が結びつく水酸化が生じ、水酸化プロリン(Hyp、ヒドロキシプロリン)に変換されていることが知られています。
![水酸化プロリン](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEghma46I1RvzGDAk1cziXM8h7hIbV_tiC6cnTvun8NaW1sa5w7Q8mvLE8fjC49VeRb2b-F6QACYEi4GLD9jZIB6G1jrvDCeGyk9fpdZxLTEqRe1obwUadZEx-NR1tO4em3rDRng1ut8B9E/s600/img_05.jpg)
この水酸化プロリンはコラーゲンタンパクにのみ作られるアミノ酸ですが、この水酸化を生じる反応は細胞によって異なります。また年齢とともに水酸化プロリンの数が減少することも判明しています。したがって、水酸化プロリンを維持することは、コラーゲンの機能を正しく保つこと、すなわち、健康な体を維持することにつながります。そのためには、コラーゲンタンパクの合成を促し、上手く蓄え、そして水酸化プロリンを増やして機能を維持させることが重要といえます。ではどのようにタンパク質を維持すれば良いのでしょうか?その答えが、コラーゲンのタンパク質代謝、すなわちコラーゲン代謝を活性化させることです。
次回の予告
コラーゲンペプチドはコラーゲンの分解産物である!
コラーゲンタンパクが分解してできる最終産物はアミノ酸ですが、実はアミノ酸まで細断されず2個以上のアミノ酸が繋がったペプチドが存在することが知られています。これをコラーゲンペプチドと呼んでいます。コラーゲンを壊して生じるコラーゲンペプチド(活性型コラーゲンオリゴペプチド:ACOP)が効果を発揮させているのです。次回はこの点に焦点を当て、ACOPがどのような作用を持っているかを紹介したいと思います。
【参考文献】
コラーゲン完全バイブル 真野博 著 幻冬舎
ハーパー・生化学 上代淑人 監訳 丸善
新田ゼラチン webサイト https://www.nitta-gelatin.co.jp/ja/labo/peptide/01.html
記事執筆
![エアープランツ・バイオ](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhoRHqDQlIz75m-krYVlZUl6_HEsjKEeFlPrtB9uOEKxvMppMSb6mxOTDo5t4XtuwxJi0Q-1I9Y6ZzxueQg68o_myhHimeCZSX-LFoYDstJbqRVA7zn8ecmxORD1Ei90U5yeluJNTa2cYU/s320/logo_abio.gif)
エアープランツ・バイオ@東京農大
(株)エアープランツ・バイオは東京農業大学総合研究所にラボを構えるバイオベンチャーです。
これまで測定することが困難であった低分子ホルモンやペプチドに着目し、それらの抗体を独自に作製することで新たな測定系の開発に挑戦しています。最近、活性型コラーゲンペプチド測定の開発が成功したことにより、コラーゲンペプチド代謝研究の飛躍的な進展が期待されます。
エアープランツ・バイオはバイオの技術で毎日の健康生活をサポートしてまいります。
URL:https://airplants-bio.co.jp/