このブログを検索

聴力は、自然な老化で衰えていくものの、それに加えライフスタイルやストレス等も聞こえにくさのリスクに。大音量を聴き続けないなどの自衛とともに、気になったら早めの受診も、快適な「聞こえ」を維持するポイントです。

40代から進む「聞こえにくさ」、原因と対策

聞こえにくさ

「最近、耳が遠くなって…」気にはなるけれど、年のせいだから仕方ない、とやりすごしていませんか? 確かに聴力は自然な老化で衰えていくものの、それに加えライフスタイルやストレス等も聞こえにくさのリスクに。大音量を聴き続けないなどの自衛とともに、気になったら早めの受診も、快適な「聞こえ」を維持するポイントです。

1.「聞こえ」を担う内耳の細胞は 加齢とともに減り、再生しない

耳の構造は良く知られている通り、外耳、中耳、内耳の大きく3つの部位に分けられます。このうち「聞こえ」をおもに担うのは内耳。有毛細胞という細かい繊毛(聴毛)を持つ細胞が音を感知し、電気信号として脳に伝え、はじめて「聞こえた」ことになるのです。

この有毛細胞は加齢とともに自然な老化で傷んだり、数が減ったりします。それにともない物音や言葉が以前より聞こえにくい、聞き取りにくい、といった症状が現れやすくなります。これを「加齢性難聴」といいます。損傷した有毛細胞は再生しないため、加齢性難聴に対する根本的な治療法は現在のところありません。

一般的には、40代から徐々に、まず高音域から聞こえにくくなり、60代になると中低音も含め聞こえが悪くなったと感じる人が急に増えてきます。また、加齢により耳から脳への情報伝達のスピードも落ちるため、早口や、反響する部屋での音や声も聞き取りにくくなってきます。75歳以降になると半数の人が日常生活で不便を感じるとされています。

【聞こえのしくみ】耳は3つの部分から成り立っています

  • 音を集めて鼓膜まで伝える外耳
  • 音を増幅する中耳
  • 音の振動を電気信号に変換する内耳
聞こえの仕組みと耳の構造
  1. 耳介 音を集めて鼓膜まで伝える外耳
  2. 鼓膜 音を増幅する中耳
  3. 耳小骨 音の振動を電気信号に変換する内耳
  4. 蝸牛 音を集めて鼓膜まで伝える外耳
  5. 有毛細胞 音を増幅する中耳
  6. 蝸牛神経 音の振動を電気信号に変換する内耳

ネットで「聞こえのチェック」ができる

「聞こえの簡単チェック」で検索すると、補聴器メーカー等が制作している簡易チェックサイトが複数出てきます。会話を訊き返すことが多い、テレビの音が聞き取りにくくなった…など、日常生活で聴力に不安を感じたとき、参考にしても良いでしょう。(サイトによってメールアドレスや氏名の入力を求められるところがありますのでご注意ください。)

2.騒音や大音量が 耳の老化を進めてしまう

耳の聞こえにくさには加齢以外の要因で起こるものもあります。特に世界的に増えているとされ、WHO(世界保健機関)も問題視しているのが、大音量を聞き続けることで起こりうる「騒音性難聴」です。

この中には職業上(工事現場など)高リスクとなるケースも多いものの、近年はコンサート等のイベントや夜のクラブ、スポーツ観戦や施設で大音量にさらされる「レジャー騒音」によるリスクも指摘されています。また、ヘッドホンやイヤホンで音量を上げて音楽を聴くことで起こる「ヘッドホン難聴」も騒音性難聴の一種です。

WHOでは次のように一日当たりの許容基準を設けています。(抜粋)

  • 85dB(例:街頭の騒音)8時間
  • 90dB(芝刈機)2時間30分
  • 100dB(ドライヤー)15分
  • 115dB(ライブ等イベント会場)28秒
  • 125dB(雷)3秒

これらが仮に耳元で鳴り続けると、騒音性難聴のリスクが高いとされています。なお、レジャー騒音については70dBを超えないように、とする基準が2018年に設けられています。これは街頭の騒音よりはやや低いものの、近くの人と話がしにくいレベルです。

WHOの基準によれば、イヤホンで「適度の」音量で聴く分にはリスクなし、とされていますが、もし街なかで、外部の音がまったく入らないほど音量を上げていれば、先に挙げた街頭の騒音以上の負荷が耳にかかっている可能性があります。それを毎日続けていれば難聴のリスクは極めて高くなるといっても過言ではないでしょう。

騒音性難聴も有毛細胞が損傷して起こるため、有効な治療法が現在のところありません。耳栓を使う、音量を下げるなどで進行させないことが大切です。

『突然起こる』難聴は早めの受診を!

加齢性難聴や、騒音性難聴の多くは両耳に症状があらわれますが、「突発性難聴」は片耳が急に、何等かのきっかけで聞こえにくくなるのが特徴です。年代問わず、子どもでも起こり得ます。疲労やストレス、ウイルス感染などが関係しているともいわれますが、原因ははっきりとわかっていません。治療は副腎皮質ステロイド薬や血管拡張薬、ビタミン剤などの薬物療法が中心となり、発症後1週間以内に適切な治療を受ければ完治・改善が見られやすいものの、治療開始が遅くなるほど完治が難しくなり、耳鳴りが残ったり聴力が著しく低下したりする恐れもあります。

  • 急に聞こえなくなった(高音だけ聞こえない場合も)
  • 安静にしてもなかなかよくならない
  • 耳鳴りやめまい、吐き気をともなう

といった場合は速やかに耳鼻咽喉科を受診しましょう。

3.病気が隠れていることも 気になったら我慢せず受診を

聞こえにくさは上記のほかにも、中耳炎に代表される感染症などの病気で聞こえにくくなるケースや、ストレスや疲労、睡眠不足から耳鳴りや耳が詰まる感じがするなどの症状を併発して、聞こえにくさを感じるケースもあります。痛みや発熱、耳漏(耳から膿が出る)などの明らかな異常をともなっている場合はもちろん、そうでない場合も、年のせいとやりすごさず、一度耳鼻咽喉科で診察や検査を受け、自分の耳の状態を知っておくことが大切です。

日常生活の中では、大音量を聴き続けず耳を休ませること、ストレスや疲労をためないこと、適度な運動等で血流をよくすること、バランスの良い食生活が耳をいたわるポイントになります。

補聴器は早期のうちに

補聴器と聞くと、かなり高齢になってから、というイメージを持たれるかも知れません。しかし、視力が低下すれば子どもでも眼鏡をかけるように、聴力も生活に支障が出て困ったら、まだ早いのでは、とためらわず補聴器を検討するのが望ましいといえます。

具体例としては

  • 多人数での会話についていけない
  • 名前を呼ばれているのに気づかない
  • 料理や水回りの家事で音が聞こえず危ない思いをする
  • バイクや車の走行音が聞こえずヒヤリとする

などです。

補聴器は眼鏡よりも慣れるのに時間がかかります。そのため耳鼻咽喉科で調整した補聴器をつけてから3カ月程度はトレーニング期間として、定期的に通院し、聞こえのチェックを受け必要に応じて調整を加えます。

日本耳鼻咽喉科学会では、専門医かつ補聴器の適正な選択や使用に関するカリキュラムを受講した医師を対象に、「補聴器相談医」の認定制度を設けています。耳鼻咽喉科学会のホームページに都道府県別の名簿がありますので、補聴器を考えている人は参考にすると良いでしょう。

日本耳鼻咽喉科学会ホームページ 補聴器相談医名簿:http://www.jibika.or.jp/members/nintei/hochouki/hochouki.html

【参考】

記事執筆

福田真由美様プロフィール

メニュー