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血糖ケアのキホンは「一汁三菜」&「食後の4000歩ウォーキング」

血糖ケアのキホンは「一汁三菜」&「食後の4000歩ウォーキング」

血糖ケアのキホンは「一汁三菜」&「食後の4000歩ウォーキング」

新型コロナウイルス感染症を重症化させるなど、体へのさまざまな悪影響が報告されている糖尿病。今や60歳以上の3人に1人、その予備群とされる高血糖まで含めると全国で2000万人にものぼるとされています。

女性は閉経後、ホルモン分泌の変化により食欲が増し、糖尿病リスクが上がるとも。しかしやみくもな食事制限は栄養バランスを崩し逆効果に。高血糖改善の基本として伝統的な「一汁三菜」を提唱する、世田谷内科・糖尿病総合クリニック(4月5日開院)院長 櫻岡怜子(さくらおかりょうこ)先生が、著書『専門医がゼロから教える「糖尿病予備群」と言われたら最初に読む本』(自由国民社)から対策のポイントを解説します。

糖尿病は「全身病」体中の血管が傷つく

雑誌やテレビの健康特集で取り上げられる機会の多い糖尿病。その前段階として、血液中の糖の濃度が高くなる「高血糖」があります。いわば糖尿病予備群であり、国内で2000万人ともいわれています。

高血糖になると血管の一番内側にある内膜という膜に傷がつきやすくなり、なんらかの理由で傷つけられるとマクロファージがコレステロールを取り込みアテローム(粥状硬化巣)を作ります。

これがいわゆる「動脈硬化」の状態で、さらに傷ついた部分を補修するために血小板が付着して血流が悪くなったり、内膜が破れ血栓ができて詰まりやすくなったりします。

問題なのは、高血糖も動脈硬化も、自覚症状がないということです。高血糖が進み糖尿病になってしまっても、軽度のうちはわかりません。下に挙げる合併症が起こって初めて深刻さに気づくケースが後をたたないのです。

そのころには全身の血管が傷み、あちらこちらで炎症の火種がくすぶっているような状態といえます。その前に手を打つには、健康診断等で血糖値の数値をチェックし、高血糖を指摘されたら生活習慣の見直しをすること。それでも改善しない場合は糖尿病専門医を受診することが大切です。

恐ろしい糖尿病の合併症は「しめじ」と「えのき」⁉

糖尿病が進み血管が傷むことで、臓器や組織の機能が低下したり、傷の修復ができなくなり壊死したりなどの怖い合併症が全身に起こりやすくなります。

おもな合併症は次の通りです。

「しめじ」

  • し→神経の症状「し」。
    感覚が鈍ったりしびれたりする。臓器を動かす神経も障害され、排尿困難や消化不良も。
    転倒や筋力の低下が起こることもある。
  • め→目の症状「め」。
    網膜に張り巡らされている細い血管に傷がつき、出血しやすくなる網膜症。
    悪化すると網膜剥離をきたし失明する恐れも。
  • じ→腎臓の症状「じ」。
    腎臓内には糸球体と呼ばれる毛細血管が集合した組織がある。
    ここに傷がつき機能が低下することで、体の不要物を尿として排泄されにくくなる。
    悪化すると尿毒症となり、透析治療が必要になる場合も。

「えのき」

  • え→足の壊疽の「え」。
    神経障害により感覚が鈍くなると、傷口から細菌が感染しても気づきにくく、治りにくいことから組織が腐ってしまう。ひどくなると切断を余儀なくされることも。
  • の→脳卒中の「の」。
    脳に酸素や栄養を送る血管が破れたり詰まったりしやすくなる。
    命に関わる発作を起こしたり、一命はとりとめても後遺症で介助が必要になる場合も。
    認知症も起こしやすくなる。
  • き→虚血性心疾患の「き」。
    冠動脈と呼ばれる、心臓に栄養を送る太い血管が狭くなり詰まりやすくなる。
    狭心症による胸の痛みや、完全に詰まってしまうと心筋梗塞を起こし、一刻も早く処置しなければ命に関わる。

加齢によるホルモン変化や筋肉の減少が高血糖の誘因に

女性は50歳前後から、糖尿病にかかるリスクが高くなることをご存知でしょうか?

女性ホルモンのエストロゲンにはもともと食欲を抑えたり、エネルギー消費量を上げて体脂肪量を低下させ肥満を防ぐ働きがあるとされています。しかし更年期以降、女性はこのホルモンの分泌が急減します。そのため体重が増加しやすくなり、糖尿病にかかるリスクも高くなってしまうといえるのです。

また、膵臓から分泌され、血糖をコントロールする作用のあるインスリンというホルモンも、加齢により低下したり作用が弱くなってしまいます。これは男女共通です。さらに、歳をとると筋肉量が減り、筋肉がエネルギーとして必要とする糖が余り気味になってしまうことや、逆に内臓脂肪が増え、糖がエネルギー化して消費されるのを抑える物質が多く分泌されるなどで、ますます血液中の糖が増える=高血糖になりやすくなってしまうのです。

更年期以降の女性が糖尿病リスク増となる主な要因

  1. インスリン分泌量や感受性(効きやすさ)が低下する
  2. 筋肉量が低下する
  3. 太りやすくなる(食欲が増し体重が増える、内臓脂肪が増える)
  4. 運動量が少なくなる

高血糖を改善に導く「食事」と「運動」のポイント

血糖値を下げる対策は、食事と運動が土台となります。糖尿病の治療においても、薬だけということはまずありません。生活習慣の見直しもセットで必ず行います。

食事は「一汁三菜」をお勧めします。昨今は「糖質オフ」が流行っており、主食を食べないことが健康に良いと思っている人も多いようですが、これは間違い。

確かに糖質を減らせば血糖値は上がりにくくなり、太りにくくもなりますが、脳や体を動かすエネルギーとなる糖質は、人が生きていくために欠かせない栄養素です。やみくもに糖質を摂らないようにするよりも、栄養バランスのとれた食事を心掛けることが基本です。

主食、肉や魚などの主菜、野菜の煮物や和え物などの副菜、主菜と副菜を補う(酢の物、サラダ、果物など)副々菜、そして汁物の「一汁三菜」を基本にすれば、三大栄養素である炭水化物(糖質)、脂質、タンパク質をはじめ、ビタミンやミネラルもバランスよく網羅し、かつ満足感のあるメニューが可能です。

その上で、次のことを心掛けましょう。

1.よく噛んで、味わって食べる
ゆっくり食べることで血糖値の急上昇を抑えるとともに、満腹感も得られやすくなります。血糖値は食後に上がりますが、その上昇が急であるほど、インスリンを分泌する膵臓に負担がかかり、糖尿病へと移行しやすくなることがわかっています。
2.野菜から食べる
野菜は血糖値を上げにくい食材です。1.と同様、先に食べることで血糖値の急上昇を抑えることができます。
3.酢やハーブ、薬味、出汁を活用
酢の成分である酢酸には、血糖値や血圧を下げる効果があるといわれています。またハーブや薬味、出汁の味に慣れると薄味好みになり、濃い味のおかずでご飯をたくさん食べてしまうのを抑えるとともに、減塩効果も得られて血圧対策にも有効です。
4.夜20時以降は食べない
夜は身体の活動量が減り消費エネルギーも少ないので、遅い時間に食べると余ったエネルギーが寝ている間に脂肪となり、肥満のもとに。
5.おやつは低GI値からセレクト
低GI値の食品=血糖値が急上昇しにくい食品です。GIとはグライセミック・インデックス(Glycemic Index)の略で、食品に含まれる糖が血液に吸収されるスピードを指標化したもの。甘いお菓子や果物は総じてGI値が高い傾向にありますが、その中でもできるだけ低いものを選べば、甘い物が好きな人でもストレスが少なくてすみます。

食品分類 GI 食品 一食当たりの目安量
菓子類 52 プリン 1個(100g)
60 ポテトチップス 12枚(20g)
65 アイスクリーム 1個(100ml)
69 カステラ 1切れ(48g)
77 クッキー 3枚(33g)
79 みたらし団子 1本(60g)
80 チョコレートケーキ 1個(75g)
80 ホットケーキ 2枚(242g)
82 ショートケーキ 1個(75g)
84 黒かりんとう 5個(45g)
86 ドーナツ 1個(56g)
88 大福 1個(95g)
89 せんべい 2枚(30g)
95 あんぱん 1個(100g)
果物 29 いちご 中7粒(100g)
31 オレンジ 1/4個(37g)
31 グレープフルーツ 1/3個(100g)
33 みかん Mサイズ1個(75g)
36 りんご 1/3個(60g)
37 1/2個(100g)
41 メロン 1/8個(84g)
41 2切れ(64g)
47 ぶどう(デラウェア) 1/2房(43g)

(参考:『専門医がゼロから教える「糖尿病予備群」と言われたら最初に読む本』)

一方、運動は「がんばりすぎないこと」が長続きの秘訣。もし今まで運動習慣がなく、血糖値が気になったのをきっかけに運動を始めるなら、まずは「1日4000歩」を目標に。食後に歩くのが効果的です。

ちょっと汗ばむ程度がきつさの目安。慣れてきたら、徐々に増やして1日10000歩を目指すと良いでしょう。

筋トレと組み合わせると脂肪燃焼効果がアップし、減量から血糖値低下につながります。筋トレは2~3日に一度、筋肉に抵抗をかけるスクワットや腕立て伏せ、ダンベル体操などがおすすめです。

「糖質ゼロ」にだまされないように

ペットボトルの清涼飲料水などで「糖質ゼロ」と書かれていても注意が必要です。まったくのゼロというわけではありません。

食品100gまたは飲料100mlに含まれる糖質が0.5g未満であれば、健康増進法に基づく栄養表示基準制度のルールで「オフ」や「カット」、「低」を意味する言葉をつけて良いことになっているのです。

つまり、あるペットボトル飲料500mlに糖質が含まれていても、2.5g未満であれば「糖質ゼロ」と記載しても良い、ということになります。高血糖が気になる人は、大量に飲み過ぎないようにしましょう。

参考書籍 『専門医がゼロから教える「糖尿病予備群」と言われたら最初に読む本』櫻岡怜子著(自由国民社)

記事執筆

福田真由美様プロフィール

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