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高齢者の食事の実態を把握するため、70歳以上の方を対象に城西大学薬学部医療栄養学科と共同で「食事栄養調査」を実施いたしました。

ふだんの食事で不足しがちな栄養素は……?

ふだんの食事で不足しがちな栄養素

高齢化社会のいま、介護につながるロコモティブシンドロームや、高齢者の低栄養の予防が推進されています。(株)ニッタバイオラボ(2021年4月に新田ゼラチン(株)と経営統合)では 高齢者の食事の実態を把握するため、70歳以上の方を対象に、「食事栄養調査」を実施いたしました。
その結果の一部について、共同で調査を行った城西大学薬学部医療栄養学科(管理栄養士養成課程) 真野博教授の解説を交えご紹介します。

「食事栄養調査」とは

高齢者の生活習慣と食事摂取状況を調べ、栄養素の偏りや不足を明らかにし、新たな健康食品の開発につなげる目的で、(株)ニッタバイオラボと城西大学薬学部医療栄養学科(管理栄養士養成課程)が共同で行った質問紙調査です。

[時期]2017年4月~10月
[対象]在宅で自活している70~89歳の高齢者394名(男性133名、女性261名)
※応募者484名から対象年齢以外の方、この1年間に体重の大きな増減があった方などを除いた人数。
[方法]①簡易型自記式食事履歴法質問票(BDHQ-L):習慣的な栄養素等摂取量の評価
②生活習慣質問票:身体活動量や服薬状況の評価

医療栄養学科とは

バイオサイエンス(生命科学)を基盤とし、人間の健康を意識した栄養を理解する管理栄養士の養成を目指した学科です。

世界屈指の長寿国と言われる日本において、多くの高齢者は何等かの薬をのんでいます。食品との相互作用がある薬も少なくなく、これからの時代は食品と薬の両方を知っている管理栄養士が求められます。

城西大学薬学部の医療栄養学科では、薬物・薬物治療に関する基本的な科目を必修にするとともに、より専門的な薬物治療の知識も習得します。国内に管理栄養士を養成する講座がある大学は100以上ありますが、薬学部の中にそれがある大学は城西大学のみです。

●食品機能学とは…

食品には「栄養」「おいしさ」「生体調節(体のいろいろな機能を調節する)」という3つの機能があります。食品機能学はこのうち生体調節機能にスポットを当て、栄養だけでは説明できない、その食品が持つ成分の働きを扱う学問です。

ビタミンB1の不足が明らかに!

結果1:今回の調査結果の概要

真野 博先生コメント

今回の調査に協力いただいた方は、約6割がニッタバイオラボの会員様ご本人で、残り約4割がご家族やご友人でしたが、平成28年国民健康・栄養調査の同年代のデータを比較してみると、痩せている方と太っている方の割合は同程度で身体活動はやや活発な方が多いようでした。
また、服薬状況は生活習慣病の服薬治療の調査結果(厚生労働省「治療中の者に対する保健指導について」平成23年10月)と同様でした。

<調査対象になった方の特性>

調査対象者

結果2:ビタミンB群とミネラル不足に要注意

今回の調査から、いくつかの栄養素については、日ごろの食事だけではとりにくく、不足してしまう可能性があることがわかってきました。
別表で、男女別に不足している人の割合が多い栄養素を挙げました。
このうち、ビタミンB群(特にビタミンB1)が不足していることは、あまり言われていなかったことで、今回の調査では不足している人の割合が多いことが明らかになりました。また、カルシウムは、日本人には不足しがちであることはがよく知られていますが、マグネシウムもふだんの食事から摂りにくいミネラルであることがわかりました。

<男女別不足している人の割合の多かった栄養素>

不足栄養素

(注)不足者の割合は「食事摂取基準2015年度版」の推定平均必要量を下回る方の割合です。

ビタミンB1が不足する理由

真野 博先生コメント

ビタミンB1を多く含む食材としては、穀物(特に胚芽や糠が含まれる未精製穀類)や豚肉に多く含まれるほか、様々な食品に含まれています。肉類や魚介類、緑黄色野菜の摂取量の少ない方に不足が多い特徴があります。

また、今回評価に用いた食事摂取基準2015年版において、ビタミンB1の不足は、欠乏症(脚気など)が発生するリスクではなく、尿中排泄量が増加する量(十分に摂れているため尿中排泄量が増える)から算定されているために、不足者が多く見積もられている可能性もあります。

対策としては、下表を参考に、ご自身で不足していると思われる栄養素を意識して食材を選ぶようにしましょう。

◆不足栄養素の特徴と摂取方法のご参考◆

不足栄養素の特徴と摂取方法

上表の「主な摂取源となっていた食品群(番号は順位)」は、今回の食事栄養調査で、その栄養素を摂取する為によく食されていた食品群です。
栄養素の摂取を心がける際には、その栄養素の含有量が多い食品であっても、一回あたりの摂取量や摂取頻度が少ない場合は、必ずしも主要な摂取源とはならないことに注意が必要です。

栄養素の摂取量=「栄養密度(食品における栄養素の含有量)」×「ポーションサイズ(1回あたりに食べる量)×「摂取頻度(食べる回数)」

「栄養密度の高い食品=主な摂取源」ではなく、「日頃の摂取量の多い食品、かつ、その成分をそこそこ含む食品」を心がけて摂ることが重要です。不足が気になる栄養素は、上表の「主な摂取源となっていた食品群」を食べ増やすことが現実的で続けやすい対応となります。

お話を伺った方

真野博先生プロフィール

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