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女性は閉経にともない、腎臓にダメージを与える要因が増えてきます。自覚症状があらわれにくいため、知らないうちに悪化してしまう恐れも。生活上のケアや受診のタイミングについて、腎臓病と栄養学に詳しい医師に伺いました。

40代以降は注意!身近にひそむ「腎機能低下」のリスクとは?

身近にひそむ「腎機能低下」のリスク

特に不調を感じないにも関わらず、健康診断で腎機能の低下を指摘された……そんな人はいませんか?
特に女性は閉経にともない、腎臓にダメージを与える要因が増えてきます。自覚症状があらわれにくいため、知らないうちに悪化してしまう恐れも。
生活上のケアや受診のタイミングについて、腎臓病と栄養学に詳しい医師に伺いました。

1.腎臓は血液の浄化槽。生命維持に欠かせない調節機能も

みなさんは、次の項目に心当りはありませんか?

  • 塩辛いものが好き
  • 水分はあまりとらない
  • つい深酒してしまう
  • ダイエットをがんばりすぎて急にやせた
  • 閉経後、太ってきた
  • 朝もむくみが気になる

一つでも当てはまったら、“ものいわぬ臓器”腎臓がSOSを発しているかも知れません。

腎臓は老廃物を尿として排泄する機能だけでなく、体内の電解質やpH、血圧の調節、ホルモンの産生など、体内環境を維持する重要な役割も担っています。

腎機能は加齢にともない徐々に低下していきますが、疾患や食生活の偏りがあると加速されます。機能が著しく損なわれる「腎不全」(正常時の10%以下)になると、人工透析が必要となります。老廃物が体内に溜まる一方となるため、機械で排出させなければならなくなるのです。

ひとたび低下した腎機能は回復しません。しかし、食生活をはじめとする生活習慣に気をつけることで、機能を維持したり、低下をゆるやかにすることは可能です。

腎臓の構造と働き

腎臓の構造と働き

腎臓には、腎動脈から1分間に200ミリリットルもの血液が送られ、糸球体でろ過されて原尿(尿のもと)が作られます。原尿の量は1日あたり150リットルといわれていますが、膀胱へ尿としてためられるまでに、必要な電解質やたんぱくなどが再吸収され、水分量の調節も行われるので、最終的にはその1%にあたる約1.5リットルが尿として排出されます。

2.女性は更年期も腎機能低下の引き金

腎機能の低下はおもに、上の図で示した糸球体の血管が、動脈硬化により硬くもろくなってしまうことで進みます。血管が詰まり、老廃物の排泄や、体に必要な電解質等の取り込みがうまくいかなくなるのです。

動脈硬化は、糖尿病や高血圧などの生活習慣病で進行することはよく知られています。加えて女性は更年期以降、女性ホルモンの分泌が減少することで、血管のしなやかさが失われ、動脈硬化が進みやすくなるので要注意です。

また中高年、特に60代以降の女性に多く見られるのが「尿路感染症」を遠因とする腎機能低下です。尿路感染症とは尿道、尿管、膀胱、腎盂(腎臓の入り口)、腎臓に菌が感染し炎症を起こす病気です。

女性ホルモンの分泌が減ると、陰部の粘膜の分泌も減ります。そこに下着の摩擦や洗い過ぎなどによる刺激が日常的に加わると、さらに粘膜は薄くなり乾燥しやすくなります。

粘膜には、外部から異物が侵入するのを防ぐ免疫機能があるため、その働きが弱くなると菌が尿道口から入り込み感染しやすくなる、というわけです(【尿路感染症はこうして起こる!】参照)。

尿路感染症はこうして起こる!

女性ホルモン分泌低下
↓★下着のこすれや陰部の洗い過ぎ
粘膜が薄くなる

菌が尿道から侵入、感染

尿道炎、尿管炎、膀胱炎、腎盂腎炎(尿路感染症)

腎機能低下

「無理なダイエット」と「水分制限」は腎臓をいためつける!

年代問わず、腎臓をいたわる意味でご法度なのが急激な減量。極端なエネルギー不足に陥ると、体は自分の内臓や組織を壊してエネルギーを確保しようとします。その結果、腎臓の細胞もダメージを受け、機能が低下してしまいます。

また、頻尿や尿モレの悩みを持つ方が、トイレの回数を減らそうと水分を控えていると尿量が減るため、糸球体が老廃物で“目詰まり”しやすくなり、感染症のリスクが高くなるなどで腎機能の低下を進めてしまいます。

3.腎臓をいたわる生活のポイント

塩分は控えめに、トイレは我慢しない

腎機能の低下を抑えるには、常に水分代謝を良くして老廃物の排泄がスムーズに行われるようにすることが大事です。そのために、以下を心がけましょう。

  • 塩分は控えめに
  • 水分は十分にとって →肥満を背景とする糖尿病性腎症は、慢性腎臓病の主要因であり、人工透析の原因の第一位
  • 深酒はしない →アルコールを摂り過ぎると尿酸が排泄されにくくなり、高尿酸血症による腎臓炎(痛風腎)の要因に
  • トイレはがまんしない →尿路感染症予防にも大

なお、腎臓病の食事療法として、タンパク質制限がありますが、これはあくまで医師が必要と判断した場合に治療の一環として行われるものです。健康な人が、腎機能の低下を遅らせようとして自己判断で行ってはいけません。体に必要なタンパク質が不足し、却って健康を害する恐れがあります。食事は栄養バランスよく、が鉄則です。

こんな自覚症状が出たら受診を!

  • 尿が泡立っている(タンパク尿の特徴)
  • 血尿(コーラのような色の尿)が出た
  • 頻尿、排尿時の痛み(尿路感染症の疑い)→腎臓内科、泌尿器科を受診しましょう。

健康診断の項目「血清クレアチニン」「eGFR」とは

血清クレアチニン

腎臓から排泄される老廃物の一つ。糸球体の濾過能力が低下すると値が高くなる。

基準値※
男性:0.65~1.09mg/dL 女性:0.46~0.82mg/dL

※慢性肝臓病 生活・食事指導マニュアル~栄養指導実績編~

eGFR

推算糸球体濾過量ともいい、腎機能をあらわす指標の一つ。血清クレアチニン値、年齢、性別から算出。※ネット上で計算できます(日本腎臓学会)。

https://www.jsn.or.jp/global/general/check.php

クレアチニン値は、体内の水分量が少なかったり、筋肉量が多い人の場合は、基準値より高めに出ることがあります。そのため、多少高い程度であればまず心配はありません。健康診断で要再検となった場合は、自覚症状がないから大丈夫だろうなどと放っておかず、腎臓内科を受診しましょう。

お話を伺った方

磯貝晶子先生プロフィール

聖マリアンナ医科大学東横病院
健診センター 副センター長

磯貝 晶子(いそがい あきこ)先生

日本外科学会専門医、日本臨床栄養学会認定臨床栄養指導医。
専門は消化器・一般外科、腎臓病、栄養学。

同病院健康診断センター 女性検診部門は「いつまでも輝く女性であるために」をコンセプトに、女性のための人間ドック、乳がん検診、子宮がん検診等の女性検診をカバー。女性がより美しく健康に生活できる体づくりをめざして、栄養カウンセリングや妊活サポートまで行う「プリンセスプラン」(税込3万4300円~)も用意されている。

記事執筆

福田真由美様プロフィール

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