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「元気で長生き」は誰もが願うこと。しかしフレイルと呼ばれる心身の弱った状態になると、要介護となる危険性が高くなってしまいます。早いうちに気づき、予防や対策につとめることが大切です。

健康長寿のために取り組もう、フレイル予防!

体を守る力が低下 早く気づけば戻せる

「元気で長生き」は誰もが願うこと。しかしフレイルと呼ばれる心身の弱った状態になると、要介護となる危険性が高くなってしまいます。早いうちに気づき、予防や対策につとめることが大切です。

体を守る力が低下 早く気づけば戻せる

フレイルの語源は「虚弱」「脆弱」を意味する英語「frailty(フレイルティー)」で、加齢とともに心身の活力や社会的なつながりが減ってしまう状態 を指します。健康と要介護の中間段階であり、健康寿命(元気に自立して過ごせる期間)を縮めてしまう要因になります。
人間にはもともと、病気や不調のもとになる害や刺激(ストレッサーといいます)から、体を守る力が備わっています。生活習慣病等の持病がある状態で、そうした体を守る力が加齢により低下すると、 ちょっとしたことで体調を崩すなど、心身の機能が衰えやすくなってしまうのです。
フレイルは少しずつ進行するため自分ではなかなか気づきにくいことも問題です。しかし、早期に気づき対策をとれれば、健康な状態に戻すことが可能です。フレイルのおもなサインは次のとおりです。

フレイルかも!?サインの一例

一つでも思い当たったら要注意。フレイルのサインは、筋力の衰えや気力の低下、人との交流がおっくうになるなどにあらわれます。

    □ バスや電車で、一人で外出できない
    □ 階段を昇るとき手すりや壁をつたう
    □ 半年で2~3kg体重が減った
    □ お茶や汁物でむせることがある
    □ 週に1度も外へ出ないことがある
    □ 周りの人から「いつも同じことを聞く」などのもの忘れがあるといわれる
    □ 以前は楽にできていたことが、今ではおっくうに感じられる

参照:厚生労働省「基本チェックリストとフレイル」より編集部作成

フレイルは体だけでなく、心や認知機能、社会性(人とのつながり)も弱くなる状態を指す

体を守る力とは

ウイルスなどの異物や紫外線、化学物質など、私たちは多くの害や刺激(ストレッサー)にさらされています。疲労や寝不足、ストレスなども含まれます。
それらから体を守る力は次の4つに大別されます。

  • 防衛力(ストレッサーと戦う力)
  • 予備力(強いストレッサーに対処可能な余力)
  • 適応力(ストレッサーに適応し体へのダメージを減らす力)
  • 回復力(ストレッサーによるダメージから回復する力)

フレイルではこのうち特に、「予備力」が低下している状態といえます。 健康を守る余力がなくなるために、ちょっとした不調で寝込んだり、ささいなアクシデントがきっかけで歩けなくなったりし、要介護に至ってしまうリスクが高くなってしまうのです。

予防の基本は「閉じこもらない」動いて、話して、活力アップ!

コロナ禍でなかなか積極的に外出できない状況では、ともすると一日中じっとしてぼんやりと過ごしてしまいがち。人込みを避けて散歩する、家にいても意識して体を動かすなど、閉じこもらない工夫がフレイル予防には大切です。また、電話や、パソコン等の画面ごしでも良いので人と話をすることは、気分の落ち込みを防ぎ脳の活性化に役立ちます。
高齢になると食事量が減るため栄養不足気味になり、それもフレイルを進行させる要因になりますが、体を動かせば自然と食欲も増してくるものです。栄養バランスを考えできるだけさまざまな種類の食品を摂りましょう。栄養状態が良くなると病気をはねのける免疫力もアップします。

無理のない範囲で体を動かし、日々の暮らしにメリハリを

密を避けた散歩:足腰の筋力低下を防ぐために、無理のない範囲で歩きましょう。
ラジオ体操:短時間で効率よく全身運動できます。毎日の習慣に。
テレビを観ながら立ち座り:椅子から立ったり座ったりするだけでも足腰の運動に。転倒やふらつきが心配な人はテーブルや壁に手をつき行ってもOK。
朝日を浴びる:朝の光を浴びると覚醒と休息をつかさどる体内時計がリセットし、夜の寝つきが良くなるなど昼夜のメリハリがつきやすくなります。

挨拶だけでも妙薬に! 家族や友人と対話を

電話やネットの活用を:直接会えなくても、電話やネット等の使い慣れたツールで話をするようにしましょう。挨拶一つかわすだけでも孤独を防ぎ、生活に張り合いをもたらします。
思い出を語らう:ステイホームが続き最近の話題がなければ、思い出話に花を咲かせるのも一手です。

低栄養を防ぐために、バランスの良い食事を

「主食、主菜、副菜」をそろえたメニューを :主食となるご飯やパンなどのほか、主菜で肉や魚、副菜で野菜や海藻といったようにおかずを充実させるとさまざまな種類の食品をとりやすくなります。

タンパク質を意識して:特に体をつくるタンパク質はフレイル予防に重要。肉や魚、卵や豆類などの食品からしっかり摂るよう心がけましょう。

筋肉が減る「サルコペニア」の予防も大事

サルコペニアとは、加齢にともない筋力が低下したり、筋肉量が減ってしまうことを指し、身体のフレイルに関係します。筋肉量が減ると筋力や体力が低下し、運動量が減ります。その結果ますます筋力が低下し、やがて歩けなくなり寝たきりになってしまうリスクが高くなってしまうためです。サルコペニアを予防するためにも運動で足腰を鍛え、筋肉の材料となるタンパク質を十分にとることは大事なのです。

お話を伺った方

阿部桃子(あべ ももこ)先生プロフィール

東京医療保健大学 医療保健学部 看護学科/大学院 医療保健学研究科 教授

阿部桃子(あべ ももこ)先生

看護学博士、看護師。日本老年泌尿器科学会評議員、北日本看護学会評議員。高齢者の看護・ケアを主テーマに、講演活動も精力的に行っている。

記事執筆

福田真由美様プロフィール

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